「本質的価値」と「時間価値
オプションのプレミアムには、「本質的価値」と「時間価値」の
2つの価値があります。
ここでは、オプションの
「本質的価値」と「時間価値」について述べていきます。
「本質的価値」と「時間価値」を知る前に・・・。
ブラック=ショールズ・モデルなどで求められます、
プレミアムの理論価格は、次のような形でも表せます。
理論価格 = 本質的価値 + 時間価値
それらを説明する前に、もう一度、
の復習をしておきたいと思います。
ITM(イン・ザ・マネー)0TM(アウト・オプ・ザ・マネー)
ATM(アット・ザ・マネー)をまとめますと、以下のようになります。
<コールの場合>
OTM:権利行使価格が原市場の価格水準より大きいもの。
ITM:権利行使価格が原市場の価格水準より小さいもの。
<プットの場合>
OTM:権利行使価格が原市場の価格水準より小さいもの。
ITM:権利行使価格が原市場の価格水準より大きいもの。
<コールの場合もプットの場合も同じ>
ATM:権利行使価格が原市場の現在の水準と同じもの。
*例:SONYの株価が、現在16000円としますと、
この時の、ATMが、16000コールと16000プット両方でして、
15500コールはITM、16500コールはOTM。
一方、
16500プットはITM、15500プットはOTM。
となります。
本質的価値
本質的価値は、ブラックショールズ・モデルとは?で掲げた@〜Eのうち、
@原資産価格、A権利行使価格の関係で決定されます。
コール・オプションの場合、
原資産価格からコール・オプションの権利行使価格を差し引いた額です。
プット・オプションの場合は、
プット・オプションの権利行使価格から原資産価格を差し引いた額です。
<コールの場合>
OTM:権利行使価格が原市場の価格水準より大きいもの。
ITM:権利行使価格が原市場の価格水準より小さいもの。
<プットの場合>
OTM:権利行使価格が原市場の価格水準より小さいもの。
ITM:権利行使価格が原市場の価格水準より大きいもの。
<コールの場合もプットの場合も同じ>
ATM:権利行使価格が原市場の現在の水準と同じもの。
を眺めながら、本質的価値について見て行きましょう。
コールとプットともに「本質的価値」があるのはITMのみです。
これについては以下のように理解するといいでしょう。
権利行使価格と原市場価格の「正」の差が本質的価値になります。
ITMは権利行使して得た
原市場のポジションを同時に反対売買することで
利益=「正」の差
を得られるものなので、
ゆえに、本質的価値があるのはITMのみです。
ATMやOTMは権利行使して得た
原市場のポジションを決済(反対売買)
しましても「正」の差を得ることができないので
「本質的価値」は存在しません。
以上を例を挙げて見て行きましょう。
今、SONYの株価が、16000円とします。
仮に、15500コールを権利行使しますと
16000円のSONYの株を15500円で購入することができます。
このとき、このSONYの株式を同時に現在の株価16000円で売却すると
16000円−15500円=500円の利益を上げることができます。
この500円が「本質的価値」です。
ちなみに、ATMの16000コールやOTMの16500コール
を権利行使して同様のことをしても利益を上げることはできません。
現在の株価16000円−16000コール=0円
現在の株価16000円−16500コール=−500円
となるからです。
次に、16500プットを権利行使したときのことを考えてみましょう。
SONYの株価が、16000円のとき16500プットを権利行使すると、
現在価格16000円のSONYの株を1枚につき16500円で
売ることができます。
このとき、
このSONYの株式を同時に現在の株価16000円買い戻し ますと
16500円−16000円=500円の利益を上げることができ
まして、この500円が、「本質的価値」になるのです。
16000プットや15500プットを権利行使して同様の
ことを行っても利益を上げることはできません。
16000プット−現在の株価16000円=0円
15500プット−現在の株価16500円−=−500円
となるからです。
時間価値
次に時間価値について説明しましょう。
時間価値は、同じくブラックショールズ・モデルとは?で、掲げた、
B残存日数、Cボラティリティ、D短期金利、E配当利回りから
なりますが、なかでも大きな要因は残存日数とボラティリティです。
短期金利と配当利回りも価格に影響を与えますが、
その影響は非常に小さいので重視しなくてもさほど心配はありません。
時間価値は、オプション取引独特のタイム・ディケイという
時間の経過とともに徐々に減少し、満期日にはゼロになります。
これこそが、横ばい相場でも利益を重ねることができる原因です。
以上を例を挙げて見て行きましょう。
SONYの現在の株価が16000円のときのSONYの株価の
15500コールの価格(プレミアム)が600円だとします。
すでに、述べましたように本質的価値は500円であります。
では、残った100円(=600円−500円)は何でしょうか?。
これが、「時間価値」になるのであります。
もうひとつ、例を述べます。
SONYの現在の株価が、16000円のときのSONYの
16500プットの価格が650円だったとします。
このとき、本質的価値は500円なので、「時間価値」は150円
(=650円−500円)になります。
そして、すべて「時間価値」になりますのが、
コールとプットのATMとOTMのオプション価格です。
そして、「時間価値」は、ATMで最大になるのであります。
図を入れる
図に、プット・オプションの本質的価値と
時間価値の関係について3つの例を挙げてみました。
《例1》がアウト・オプ・ザ・マネーの例、
《例2》がアット・ザ・マネーの例、
《例3》がイン・ザ・マネーの例です。
《例1》《例2)は本質的価値がゼロであり、プレミアムのすべてが時間価値
《例3》は「権利行使価格−日経平均株価」分の
本質的価値と時間価値をあわせたものになっています。
オプションの時間価値は、限月の同じもののなかでは、
アット・ザ・マネーで最大となり、権利行使価格が原資産価格から
買い手にとって不利な側に離れた、
よりアウト・オブ・ザ・マネーのものほど時間価値が小さくなります。
とくに大きく離れたアウト・オブ・ザ・マネーのものを
ディープ・アウト・オブ・ザ・マネーといい、プレミアムは大安売り状態ですが、
収益機会は非常に少なくなります。